20.0.5熔岩流による半島状の急崖など(新潟県津南町)

めがね使用
20-0-5-3D図

鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)第4巻p1163。第20章図20.0.5半島状の急崖および湾入状と半島状の連なる急崖(2.5万図「赤沢」より)

新潟県南部。急斜面ないし急崖が3種類ある。一つは天上山および狐峰をふくむ北方へ緩傾斜した小起伏面と集落や水田ののある台地との境界をなす急斜面で, 北へ半島状に張り出しているもの。これは台地をおおって流れた熔岩流の末端斜面である(根拠は段落末尾に示す)。二つ目は,北部を東流また北流する信濃川 が形成した段丘の後面段丘崖および信濃川の側刻崖。最後は東端を北流する中津川の側刻崖で,ここでも「湾入状と半島状の急崖が連なっている」。この急崖に 注目すると,小起伏地では頂部と基部に一連の「がけ(岩)」記号があり,台地部分では中腹と基部にある。よって北部の台地は,内部に熔岩流をはさんだ古い 火山麓扇状地であり,南部の小起伏地はその上に重なった熔岩流原(厚さ約70m)と考えられる。
 なるほど。しかし集落を載せた台地は,東部の沖ノ原遺跡のあるあたりはどうみても火山麓扇状地というよりは河岸段丘面ではなかろうか。迷った時のナビ頼 みで,地質図Naviにあたってみると,遺跡のある付近は段丘としており,やや起伏の大きい天上山の北西付近は一段高位の段丘面で,いずれにせよ火山麓扇 状地としてはいない(地形的には大きな差がないからどちらでもいいのだが)。ただ地質図の高位の段丘と遺跡のある段丘の境界線が平面図でおおきく波打って 描かれているのが解せない。なお地質図では遺跡のある台地東方の崖には,基部・中腹どちらも熔岩記載はなく,魚沼層群下部層の「礫・砂・シルト」となって いる(礫岩・砂岩・シルト岩だと思うけれどもね)。ここは鈴木氏が「がけ(岩)」記号から熔岩流を想定したところであるが,これは鈴木氏の勇み足か?。逆 に地質図にも難点がある。貼付の断面図では,熔岩流は遺跡のある段丘より下位に(古く)描かれているが,熔岩流の後に河岸段丘が形成されたのなら,熔岩流 と河岸段丘の境界線がこんなに入り組んだ形にならないであろうのに(この地図の西方ではさらに入り組んでいるのだ)。この点は明らかに鈴木氏に軍配。

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