19.2.65 阿武隈山地南部の断層線谷と断層線崖【茨城県:常陸太田市】

めがね使用
19-2-65-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』第4巻p1130。第19章図19.2.65両側で地質の異なる断層線谷と断層線崖(2.5万図「大中宿」より)


 茨城県北部。山田川はみごとな直線谷を形成している。その東側の丘陵はこの谷に向かって緩く傾斜し,丘陵を刻む谷はおおむね必従河川で,谷口はほぼ等間 隔といってよい。図の北東部の山塊は露岩記号に注目すると(左の3D図では見にくい),「西落ち5度内外で傾斜する硬岩層のケスタである」と推論できると いう。
 西側の丘陵には,突出した山や山頂小起伏面が認められる。主要な谷は南へ向かう長大な穿入蛇行谷である(ただし上流部,図の北部では蛇行しない)。丘陵の東縁は比高150mの直線的急崖となっている。
 山田川沿いの谷が東落ちの断層崖であるとしても顕著な断層角盆地は発達していないことなどから(詳しくは本文参照),この直線谷と直線的急崖はそれぞれ 断層線谷と断層線崖であり,西側丘陵は準平原が侵蝕復活したもので,東側丘陵は「軟岩で構成され,かつては西側丘陵と同じ高度であったが,山田川沿いの断 層破砕帯の急速な下刻に引きずられて西側よりも急速に開析され,接峰面が西へ傾斜するようになり,その結果として断層線谷と断層線崖が形成された」とい う。そうか,準平原時代に長大な蛇行河川が形成されたのだな。

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