13.2.16 黒部川の谷底幅異常【富山県:黒部市】

めがね使用
13-2-16-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)第3巻p743。第13章図13.2.16差別侵蝕による谷底幅異常(2.5万図「舟見」より)

黒部川扇状地の扇頂付近。愛本橋のすぐ上流で顕著な狭窄部が認められる。狭窄部の背後の丘陵には、右岸側で標高380mと300m、右岸側で標高260m と190mに、それぞれ段丘面がある。このことから過去には狭窄部付近にも幅広い谷底低地が広がり、谷口は現在より上流にあったと解される。狭窄部の上流 は、水田の散在する丘陵斜面があり、軟岩の地すべり地形であろう。よってこの狭窄部は「黒部川でさえ側刻困難なほどの強抵抗性岩で・・・・幅の狭い岩体 (たとえば岩脈や固結した火砕岩)で構成され、その暴露効果で生じた表成谷であろうと推論される」としている。

13-2-16-地質図
なるほど納得。ただ本当に地形図だけの読みとりから、ここまで言えるの かという疑問はいつものようにある。赤枠南西部の軟岩域の発達を推定するくだりも、根拠は「水田の散在する緩傾斜な丘陵斜面すなわち地すべり地形(軟岩 域)」というのだから・・・・。で、日本シームレス地質図(産業総合技術研究所HP公開)にあたってみた。20万分1では狭窄部の地形地質が無視されてい るような感じ。流紋岩なのか安山岩(玄武岩)なのか、忠実に読むと完新世堆積物になってしまうが。上流部の「地すべり」「軟岩」もあやしい。でも本文の記 述から教えられることが多いのも本当。
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