11.4.3 久米島の海成段丘【沖縄県:久米島町】

めがね11-4-3-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』第11章p641。第11章図11.4.3サンゴ礁段丘と非サンゴ礁性の段丘(2.5万図「久米島」より)


本文を要約する。東部は高度200mをこえる丘陵があり水系がはっきりし、集落も発達する。西部は高度が低く緩い起伏をもった段丘面が発達している。海岸 段丘は上位からT〜X面に分けられ、第T面は旧汀線高度140mで緩傾斜の段丘面はやや開析されている。第U面はだるま山南方から仲地東方の旧汀線高度 100mの面で傾斜はより緩く開析度も低い。第V面はU面より傾斜が大きく旧汀線高度は75mである。第W面は旧汀線高度50mで図の西部まで広く発達 し、大小の凹地や小突起がある。凹地底に池沼がないのでカルスト凹地の可能性があり、小突起は過去のピナックル(サンゴ礁の浅い湖底から上にのびる小突起 地形)であろう。


11-4-3-段彩図
第X面は旧汀線高度25mで図北西の仲間グムイ付近に明瞭だが、図の南 西ではW面との境界が不明瞭である。過去の礁嶺と解されるホタルドーム付近・11mの高まりとその背後の礁原の凹地は北部の旧礁嶺・旧礁原より低い。標高 5m以下は現成のサンゴ礁をおおう砂礫堆で、サンゴ礁は南部の海岸で北部よりも発達している。大岳の北と南から西方へ流出する沢は、仲地西方と久間地西方 の大きな凹地に流入して末無川となる。透水性の高い石灰岩地域には水系が発達せず、ため池の建設もむずかしい。

 以上から、図の東部は非石灰質の透水性の低い中硬岩ででき、西部は透水性の高いサンゴ礁石灰岩でできているだろう。段丘T〜V面は非サンゴ礁性の海成侵蝕段丘で、W・X面がサンゴ礁段丘であろう。水田は非サンゴ礁段丘のみにある。
  本文の図は昭55修正であり、左図は平成19編集なので、両者を比較すると30年間の変化がわかる。大きなため池ができたこと、具志川北西 方を始め集落の周辺にあった水田がほとんどなくなっていること、一着島が(地図上で)陸続きになったこと、道路が改良されたことなど。
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