15.6.4b 上高地の沖積錐と背後の地形【長野県:松本市】

めがね使用15-6-4b-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)第3巻p855。第15章図15.6.4b沖積錐と背後の地形(2.5万図「上高地」より)

図15.6.4aのすぐ東に続く地域。長野県西部。急峻な満壮年期的山地とその山麓の沖積錐群。以下の特徴が読みとれる。他の条件が同じならば,@流域面 積が大きいほど,A流域の平均傾斜が大きいほど,B谷床勾配が大きいほど,C流域内に露岩が多いほど,沖積錐の発達が著しい。河童橋や六百沢合流点では, 左右両岸からの沖積錐の末端が接して,梓川の谷底幅異常をもたらしている。田代池とその周囲の湿地は梓川の自然堤防と右岸の沖積錐との間の後背低地に生じ た後背池沼および後背湿地である。霞沢岳から北北東に伸びる主稜線の東面斜面は,西面斜面に比べて露岩が少なく,相対的に従順で,河谷も大きくかつ河床勾 配も小さい。よって大規模な土石流の発生は稀であろう。

 15.6.4aの火山地域の沖積錐のほうがこの図の非火山地域のそれより緩傾斜なのは,前者で土石流の移動域および定着域の旧地形が緩傾斜で あり,かつ土石流の運搬物質が細粒なためであろう。なお沖積錐と火山斜面の区別は,落水線を上方に追跡すると谷底に入るのが沖積錐,火山体の尾根部に入る のが火山斜面である。
 
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