15.5.26 石尊山北面の地すべり【群馬県:高崎市】

めがね使用15-5-26-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)第3巻p839。第15章図15.5.26尾根移動型で,かつ末端隆起型の地すべり地形(2.5万図「三ノ倉」より)

群馬県の西部丘陵地帯。本文では26行にわたって地形を分析したあと「以上のことから,風戸[付近の東西方向の小さな]丘陵は石尊山付近の円弧状山稜を冠 頂とする尾根移動型地すべりの地すべり堆であり,それの移動にともなう変形が小さいものと解される。しかも,その地すべり面は当時の烏川より低い末端隆起 型であったため,その河床を隆起させて間野付近の段丘を形成した可能性がある。この地すべりは緩慢な移動であったから,烏川は地すべり尖端部を下刻して, 本来の位置を流れたのであろう。湯殿山も,その付近の谷底幅異常と屈曲度異常の存在ならびに烏川左岸にこの種の蛇行山脚存在しないことからみて,末端隆起 部であり,ここではその隆起部より内側に低所が生じたので,そこを烏川が下刻して,湯殿山が分離したという可能性が強い」と記している。

地すべり地形は言われればその通りだが,上里見の注記付近は等高線が込んでいて,地すべり地形にしてはずいぶん急斜面のように感じる。しかしこれは北へ向 かう小さな谷が多数発達していていて,この谷の斜面が急傾斜なだけで,石尊山北面の本来の傾斜(接峰面の傾斜)とは別物と考えるべきである。石尊山と間野 付近烏川を単純に結んだ線の勾配は,水平距離1.7km,高度差250mなので傾斜角は8.4度でしかない。泥岩の地すべり地帯によくある傾斜角というべ きだろう。教訓。斜面の全体的な傾斜の傾向はは等高線の込み具合で決めてはいけない。追記:烏川の谷底幅異常も言われればその通りで,こうした見方に早く 習熟したいと思う。

ホームページへ戻る          次の番号の図へ