15.5.21 手取川最上流部の地すべり地形【石川県:白山市】

めがね使用15-5-21-3D図
鈴木隆介著『建設技術者のための地形図読図入門』(古今書院)第3巻p835。第15章図15.2.21膨出型の地すべり地形(2.5万図「加賀市ノ瀬」より)

石川県のほぼ最南端,福井や長野の県境にも近い。以下本文を転載。「・・・尾根頂部を除けばどの地区の山腹斜面も小さな屈曲に富む等高線で表わされ,不規 則な微小起伏をもつのに,凹地や小突起は存在しない。谷は浅く,しかも谷線の連続性が悪く,その追跡は困難である。たとえば,細谷川左岸の山腹斜面を読む と,標高点1424から東方に弧状に伸びる山稜があり,その北面直下には比高数十mの急崖がある。この急崖に発現する谷は,本地域で唯一の池沼(曲池)を 囲むように,腕曲状河系の斜流谷をなしている。つまり,急崖と細谷川の間の山腹斜面は全体として凸形尾根型斜面を示す」。

15-5-21-地すべり分布図
右はNIED(防災科技研)の地すべり分布図。 本文続き。「以上の特徴から,この斜面は背後の急崖を滑落崖とする地すべり堆である。この地すべり堆は,急傾斜の山腹斜面にも拘わらず,主滑落崖が低く, 斜面表層が僅かに滑動して,膨らみ出したように停止しており,全体としては極めて不安定な膨出型地すべり地形であると解される。・・・(中略)・・・(細 谷川と赤谷沿いの)崩壊の発達や細谷川の側刻あるいは豪雨や大地震が起これば,曲池付近の地すべり堆は急激に滑動して細谷川を堰き止めるであろう」。曲池 から細谷川に至る斜面の平均傾斜角は28度,こんな急斜面で地すべり(崩壊性の地すべりというのだろうか)が起きることに驚く。なお鈴木氏はここでも「六 万山の尾根頂部は熔岩のような硬岩で構成され,その下位に厚い軟岩層が存在すると解され,後者が本地域の膨出型地すべりの素因をなすのであろう」としてい る。
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